スリップ

 妻が久しぶりに夜の街に飲みに出かけると言うので、車で送るよと言って車を出した。

善意40%、何か良いことがあるかもという不吉な期待が60%だった。

帰り道は危険だと分かっていたので、祈りながら帰った。

無事に帰宅して食事を取る。

そのままの流れで、すこしアダルトビデオを鑑賞した。

たまの楽しみさ。男なんだから、これくらい必要さ。

そう言い聞かせていた。

実際、AVを観たってスリップしない場合がほとんどだし、観ない時にもスリップは起こる、だから観ても平気さ、そういう理屈だ。

(僕のスリップはいつも、この辺りから始まっている)


それから、少し外を散歩してみようと思った。

怪しい期待は、80%くらいまで高まっていた。

今回も神が守ってくださるから平気、やることは十分にやってる、僕は守られる、そんな慢心があった。


そして、呆気なくスリップした。

6年のソーバーは、いとも簡単に崩れた。

もう言い逃れはできなかった。


嗚咽が止まらなくなり、過呼吸で死にそうになったので、急いでスポンサーに連絡をした。

スポンサーは黙って話を聞いてくれたあとで、色々とアドバイスをくれた。

自己開示が必要であること、仲間の喪失で感情が乱れていること、など。


スポンサーと電話をしていくらか心が落ち着いたが、電話を切り数秒後にはまた嗚咽がとまらなくなってしまったので、別の仲間に電話をかけた。

やはり、自己開示が必要だろう、という意見。

彼自身の経験も話してくれた。


とりあえず妻が帰宅したら、すべてを話しなさい。

二人ともそう提案してくれた。


話したくない。


認めたくない。

恥ずかしい。情けない。ダサい。

認めるくらいなら死んだ方がマシ。

そのレベルで無理。


でも、そうしなければ、もっと苦しくなる。

だって、スリップする自分も自分なのだから。


自分は上手くやれているなどと取り繕うのは、もうやめにしなくてはならない。

スタディのリーダーだからなんだ、それ以前にただのアディクトだ。

二重生活は、苦しい、苦しい、苦しい。

誰か本当の僕を見てほしい。

いや、隠してるの自分なくせに。


このままでは死んでしまう。


僕は生きたい。


ただ普通に生きたい。


本当の僕はどこにいるの。


どうしたらいいの。


神さま助けてください


もうわけわかんない